「  ふーフふーフフーフフフーーー♪……  」 きょうのランは、 いつになく機嫌がいい。 「 ふーー、 ふふっ♪……  ぷっ!…  ククっ…うふふ!  」 それを見ているカラボナ、 小声で… 「 なーんかきもちわるー… 」  確かに、 普段の彼女からは想像もつかない。 「 なんか言ったか? 」 「 ええっ!? い…… いや別にぃ… はははっ! 」 ( じ、地獄耳… ) 「 わるかったな。 」 「 !! ごめん! 冗談で考えただけ… 」 「 いつもは不機嫌で、 さぞ息苦しいだろうからな 」 ( ふー…さすがに頭の中まで読めるわけないよねえ… ) 「 ううん、 ランのそういう落ち着いたトコ、 好きよ。 」 「 むふふふっ!! … ぷふふふ… 」 ( って、聞いてないし… ) 「 それで今日は一体どうしたの? 」 「 うん、 いやなあ… じつは… ( にまにま ) 今日4/23は私の… 」  顔が赤い。 ほおをかきながら、 うろたえる。 「 私の? 」 「 私の… その、 誕生日なんだ!! 」 目をつむってそう応えた。 「 ええ!!! そうだったの? 全然知らなかったわあ!! 」 「 なによ、前もって言ってくれれば… 」 「 ……なんか言いづらいだろう、 そういうの… 」 「 まあ、 そりゃねえ…(特にあなたの性格じゃあ) 」 「 とにかく、せめてこの部屋の住人でお祝いしたげるわよ、いいでしょう? 」 「 !!本当か!? あ… ありがとう、…ほんとに。 」 「 じゃあさっそく準備するわ! ラン、あなたは今日はお客さんなんだから ちょっと散歩でもしてきなさいな。 その方が楽しみも増えるでしょ? 」 「 ああ、わかった。悪いけどお願いするよ。 」 「 ええ、楽しみにしてて! …ええとユイリィはブリッジだったわね、あとは… 」 そんなわけで、ランは外をぶらつくことにした。   ※                         ※   しばらく歩いていると、 コレでもか!といわんばかりのナイスなタイミングで 「 彼 」 がたのしそうに走ってきた。 「 わーーーーーい、 るくすーーーん!! ここまでおいでぇぇぇぇぇっ!!! 」 「 こらぁーっ、 パット君! 待ちなさーい!廊下を走ってはいけませんっ!! 」  子守り!? をするルクスン。 「 やーーだようっ、 あかんべっ! 」 「 むむむむ!! こらあ! 大人に向かってそれは失礼というものであって… 」 「 わーいるくすんおこったぁー! ほーら、つかまえてごらぁん!!! 」 「 あああ! まちなさぁーーい、 まってぇ… 息が… パット… くーん…(ぜえ) 」 おじんくさいルクスン。 そんなふたりを眺めていて、 ランは思った。 ( ああ、 ルクスンはともかくあの子を… パット・キャンベルを呼べたらなあ… ) そうこう考えていると、 二人はどこかへ行ってしまった。 彼女がこの時ほど自分の 内向的な性格を呪ったことは、 ないかもしれない。   ※                          ※   しばらくして、彼女が部屋に戻ってくると……  ( ぱんっ! ぱーんっ!! ぱんっ!! )クラッカーが鳴り響く。 「 おめでとう! ラン・ラックモルデ!!! 」 「 おめでとう! ラン! 」 ユイリィも、 もう来ていた。 「 あ……… ありがとう… ( ぼー… ) 」  すっかり呑まれてるラン。 「 なあに?あっけにとられちゃって(笑) あなたの為にハッスルして仕上げるの早 めたのよ! 」 「 わたしも皆に断わって早速ブリッジを抜けてきたの。 もう! みずくさいわよ、教 えてくれないなんて… 」 「 ありがと… ありがとう… 」 「 なあにぃ? なにも泣かなくても… さあ、少ないながらも色々作ったのよぉ! さ っそく食べましょ! 」 「 そうよ、 せっかくのお祝いなんだから! 」 「 ……ああ、 そうしようか! 」 「 それでは! 」 「 ラン・ラックモルデさんの18歳の誕生日に! 」 「 かんぱーーいっ!!! 」 ささやかながらも和やかなパーティーがはじまった。 「 うーん!! このロースト、ランのオートミールとは大違い!! 」 「 わるかったな。 」 「 …なんてね! 」 「 どおだか。 」 「 あ! そういうこと言うならランの分は無しね? 」 「 だめだ! これは私の分だ。 」 それを見ていたユイリィ 「 ふふふ! あなた達のコンビは、こんな時までいつもと一緒ね! 見てる方は楽しいけど。 」 「 ぷふっ! それもそうね。 ねえラン? ぷはははっ!… 」 「 …かもな(にんまり) 」 なおも、会話ははずむ。 「 そうだわ! さっきね… 」 とはユイリィ。 「 さっき? 」 尋ねるラン。 「 うん。 もう二人たまたま通り掛かりに会ったから、お誘いしたの。 」 「 ええ? そうなのぉ? じゃあもっと作っとけばよかったわぁ…。 」 「 ううん、 あの二人はもう食事はすませたって 」 「 ああ、そうなんだ。 」 胸をなでおろすカラボナ。 「 …で、その二人とは誰なんだ? まさかヘイガーとか? 」 「 あいつほど祝いのコトバが似合わない奴もめずらしいからな… 」 「 ううん、違うわ。あなたも良く知ってる人… あら? 来たんじゃない? 」 《たったったっ》 「 もうだめだぞおっ、かけっこはあぶないから… 」 「 やあ! ユイリィ!!ご招待頂きこのルクスン… 」 「 ゆうういりぃぃぃぃっ!!! 」  声の主はそう言うなり、 彼女に飛びついた。 「 !! 」  ランは、彼がユイリィに飛びついた事よりも、今自分の前に現れた事に仰天していた。  予想外にも程がある。 「 やあ、ラン! ハッピーバースデー!! キミも段段一人前のツヴァイに 近づいて… 」 相変わらずのルクスン。 「 ごめんなさいねラン、ヘイガーじゃなくって… 今からでも呼ぶ? 」  いたずらっぽく問い掛けるユイリィ。 (ブルるるるる←首振り) 「 や、やあ… (ぼそ)来てくれてありがとうルクスン 」 「 そして!!ようこそパット・キャンベル!!!! よくきてくれた、ほんとうにっ 」 「 …なんか挨拶にずいぶん差がなかったかい? 」 いぶかしむルクスン。 「 気にするな。」 ( パット・キャンベル! 私の所にも来てくれないか? ) その意中をなんとなく察したユイリィ。 パットはまだユイリィといたがったが、 彼女に微笑みかけられると後ろ手 になにか隠しながらランの前にちょこちょこと歩み出た。 「 おねえちゃん、おたんじょうびおめでとおぉ!! 」 「 これ、 ぱっとつくったの。 おいしいから、たべて 」 その一言に、 一瞬ランの中を電気がはしった。 ( 「たべて」「作ったの」「おねえちゃん」… 私に、私に、私に??? ) 「 どしたのおねえちゃん? おめめがおよいでるよお? 」  自分が罪作りだなんて、気づこう筈もないパット。 ( …… 卒倒するなよ、ワタシ… ) 「 (はっ)……あ、ありがとう、ありがとう!ありがとう、パット・キャンベル! 」 そういうと、やっとプレゼントを受け取った。 「 中身はなんなのラン? おいしいものなんてよかったじゃない! 」 「 ああ!! 」十分条件で答えるラン。 「 あけてみて。 ぱっとのじしんさく 」 「 ああ、 そうさせてもらうよ! 」 ぴりぴりっ… 中を開いて、入っていたのは……  「 まあ!! 」 「 きゃああっおいしそおっ!! 」 「 むう、 それはわたしも食べさせてもらってないぞォ! 」 驚嘆するルクスン。 彼の自信作は「 パット特製フルーツサンド 」だった。 いわゆるミミが残っているカントリーテイストがまた食欲をそそる。 「 :・@・_:@、<:コミ…・ 」 もう言葉にならないラン……  「 さっ、 たべてぇ! (にこにこ) 」 「 あ…… ああ! いただくよ! 」 涙がうっすらと。 (じぃぃぃっ) 「 ん?…… 」 (じぃぃぃぃぃぃっ) 「 ……なんか、てれるなあ…… 」 (じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ) 「 (ぽ) では、 いただきます!(あーーーーん) 」